森谷 敏夫

(もりたに としお)
京都大学名誉教授
京都産業大学 中京大学客員教授

NEW!


情報素材料理会<第121回>

サプリってなんだ?

 
森谷 敏夫/西嶋泰史/田中齊太郎/工藤泰正

 今は具体的に病気を患っているわけじゃないけど、将来を考えると……健康食品に分類されるサプリメントは、こうしたニーズをとらえ、まさに百花繚乱、多種多様な商品が市販されています。サプリ開発の最前線に立つ皆様に、サプリとの賢明なつきあい方をうかがいました。
 
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情報素材料理会<第120回>

筋電メディカルを展望する

 
森谷 敏夫

 これまでに数々のエビデンス(科学的知見)によって、効果が証明されてきた筋電気刺激(EMS)装置は、新時代の技術を得て、2020年、次のステージに突入しようとしています。当協議会の理事で、(株)おせっかい倶楽部社長の森谷敏夫が筋電メディカルの将来像を展望します。
 
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情報素材料理会<第117回>

筋電メディカルとEBM

 
森谷 敏夫

 EBM(Evidence-Based Medicine)は、「科学的根拠に基づく医療」と訳されます。科学的根拠はエビデンスとも呼ばれ、人を対象とした研究(臨床研究)の結果を指します(国立がん研究センターHPより)。現在、推進中の「筋電メディカル」における、エビデンスの重要性と将来展望を、当協議会理事の森谷敏夫が語ります。
 
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情報素材料理会<第115回>

働き盛りのための
筋電メディカル

 
森谷 敏夫

 仕事に家事・育児、とにかく日々、忙しすぎて、食事や睡眠が不規則になりがち、運動なんて、いったいいつすればいいの? 日本の働き盛り世代の多くが抱える悩みでしょう。本当に、こんな暮らしでいいの? 筋肉と自律神経について、数多の国際的な論文を発表してきた当協議会理事の森谷敏夫が最新の知見とヒントを語ります。
 
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情報素材料理会<第114回>

アスリートのための
筋電メディカル

 
森谷 敏夫

 人間の筋肉の持つ生命活動や多様な健康情報を、生体の電気を通して読み解く新たな科学的アプローチが「筋電メディカル」。患者や高齢者だけでなく、その視野はアスリートの強化にも向けられています。筋電メディカルの提唱者で、当協議会理事の森谷敏夫が 〝科学的に正しい〟トレーニングのセオリーを明かします。
 
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情報素材料理会<第108回>

筋電メディカルに見る
未来の健康管理

 
森谷 敏夫/藤枝 俊宣

 急速に普及が進みつつある骨格筋電気刺激(EMS)装置は、そもそも、高齢者を筆頭に運動ができない人の筋肉を増やそうという狙いがありました。そのEMSは、新しい技術も得て、さらに用途が日々の健康管理に広がろうとしています。スポーツ医学の専門家である森谷敏夫が新時代のコンセプト「筋電メディカル」について解説します。
 
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ほんとうのところ「糖質制限」ってどうなんですか

糖質制限で「何が」減るのか?
 炭水化物は、たんぱく質、脂質と並ぶ三大栄養素のひとつで、体内の消化酵素では消化できない食物繊維と、食物として体内に取り入れられエネルギー源となる糖質とで構成されています。
 この糖質を制限すると、確かに体重は減ります。2週間で2㎏、1か月で5㎏減る場合もあります。問題は何が減ったかです。実は、糖質制限だけでは脂肪は余り減りません。減ったのは大部分が「水」です。
 人間の脳と筋肉は、大量の糖質をエネルギー源として使います。不足すれば肝臓や筋肉、脂肪において4倍の水と結合しているグリコーゲンを分解してブドウ糖に変換します。炭水化物の摂取を控えると体重が減るのは、分解したグリコーゲンの水分が出ていくためです。糖質が更に足りなくなると今度は筋肉が自身を分解してブドウ糖をつくります。これを繰り返すと、脂肪は減らずに筋肉だけが削られて、代謝が低下して逆に太りやすい体質になっていき、BMIは適正でも筋肉が落ちて体脂肪率が高い、いわゆる「隠れ肥満」になります。
 特に脳の場合、基本的に糖質だけをエネルギー源とし、1日に約400kcalを消費します。一方、体の4割以上を占める筋肉では、安静時の基礎代謝を1600kcalとした場合、少なくとも半分以上、800kcal以上の糖質がここで使われます。この代謝を維持するために、私たちの肝臓と筋肉と脂肪細胞には、グリコーゲンという貯蔵物がとどまっています。だから人間の体はみずみずしく、そして重いのです。
 糖質を減らせば、このように体から水が出るので体重が減ります。ただし、翌日にケーキやご飯を食べれば、また体重が増えます。糖質をとれば減ったグリコーゲンを合成するために4倍の水が体に貯蔵され、また劇的に体重は増えます。まさに「水の泡ダイエット」と言えるでしょう。
 
糖質制限のリスク
 人間の脳は24時間エネルギー、つまり糖質を使っているので、睡眠後目覚めた朝は低血糖状態です。そこで朝食を抜くとさらに血糖値が下がって体は一気に飢餓モードとなり、できるだけエネルギーを使わない状態にスイッチします。そうして昼食を食べると、備蓄しろ! とばかりに脂肪が増えます。一方で、朝の低血糖時には、脳のために血糖値を上げるホルモンがたくさん放出されるので、血管が収縮し、血圧が上がります。低血糖で、筋肉のエネルギーとなる遊離脂肪酸が増え、血液はネバネバ。グリコーゲンも底をついて脱水状態、血中水分も少ない。結果、血管が詰まって脳卒中や心筋梗塞のリスクが飛躍的に高まります。
 みなさん、それでも炭水化物、糖質を制限したいですか?
 
 
2019年4月号より


情報素材料理会<第100回>

自律神経がわかれば
自分で自分が変えられる

 
森谷 敏夫

 最近、自律神経というキーワードが注目を浴びてきています。なぜ、朝、自然に目が覚めるのか、また逆にどうして眠れたり、眠れなかったりするのか。なぜ簡単に痩せることができないのか、自分ではなかなか意識的には制御できないカラダやココロの動き。実はそれらは全て自律神経が自動的にバランスを保つように制御しているそうです。この自律神経の働きについて、長年世界に先駆けて深く研究してきた森谷敏夫先生に解説していただきました。
 
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情報素材料理会<第99回>

寿命を延ばす食と運動
~細胞から若返ろう~

 
森谷 敏夫

老化を防ぎ、若々しく生きる。そのカギを握るのは「テロメア」という細胞ではないかとの研究成果が続々と発表されています。
私たちの健康寿命を延ばす食と運動について、運動生理学の専門家である森谷敏夫先生に、世界の最新エビデンスデータに基づき解説していただきました。
 
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歩行速度と生存率
 
 歩くスピードについて、2011年アメリカで発表された興味深い研究結果があります。これは、3万4485人の方を対象に、最大21年をかけて追跡調査したものです。この間に1万7528人の方がお亡くなりになったのですが、これらの人が亡くなった年齢ともっとも因果関係があったのが「歩くスピード」。つまり、歩くのが遅い人は早く亡くなり、速い人は長く生きたというデータなのです。
 具体例としては、75歳の男性が85歳まで生きた割合は、歩行速度が最も速い(毎秒1.6m)グループでは87%、最も遅い(毎秒0.2m)グループでは19%でした。ふだん歩くスピードが遅い人は要注意ですね。
 
「第2の心臓」も大切
 
 歩くためにはエネルギーが要ります。心臓や肺が悪い人は、歩くスピードがどうしても遅くなります。股関節を痛めた人も、歩きづらいのでスピードが出ません。腰から下の筋肉は「第2の心臓」と呼ばれています。それは、下半身の筋肉がしっかり動くことで、血液が心臓に戻るようにできているからで、グイグイ歩ける人は十分に戻ります。ところが歩くスピードが遅くなってくると、心臓に戻る血液が少なくなります。つまり、足腰が弱ると心臓も一緒に弱くなってしまうのです。そうなると、動きたくない、ちょっと疲れたら休むというような行動に変わり、いつしか動けなくなってしまいます。
 
歩幅を広く
 
 東京都健康長寿医療センター研究所が70歳以上の1149人を対象に調べ、介護が必要な人や認知症が疑われた人などを除く666人を追跡した調査によると、男性で歩幅の狭いグループ(61.9 cm以下)と、歩幅の広いグループ(70.6㎝以上)の認知機能低下が発生するリスクを調べてみたところ、歩幅の広いグループのリスクを1とすると、歩幅の狭いグループは
3.4倍、女性の場合だと実に5.8倍もリスクが高いことが分かりました。ある程度歩幅を維持するために足腰や筋肉を強くしておくことがいかに大事であり、認知症の予防に効果があるかがお分かりいただけると思います。

 このように、歩くことは認知症はじめさまざまな病気の予防・改善につながり、ひいては健康寿命をのばすことにつながるのです。
 
ご自身の健康状態や身体能力を考慮しながら無理のない運動を心がけ、状況によっては医師の指示を仰ぐなど十分注意して行なってください。
 
2018年9月号より

データの独り歩き

 
 昨今、糖尿病の人たちのデータが独り歩きして、糖質はいけないものだと思っている人が多いですね。
 たとえば、野菜から先に食べたら良いというのは、あくまでも糖尿病の患者さんに対して血糖値のピークがかなり落ちていくので良いですよっていうことです。糖尿病でない人が野菜ばかり食べていたら、当然血糖は余り上がりません。
 それに、ご飯を最後に食べるとかいうのは、和食の献立からしたら良くないことです。日本の食文化として主食はお米であり、「口内調味」といって口の中へご飯を入れ、そこにおかずを入れて調味して美味しく食べる。飲み込むと、ご破算願いましてはってまた新しい感覚で食べられるのです。そんなふうに、普通の人にとって糖は何にも問題ないんですよ。糖を食べ、血糖値が上がるから満腹感が出ますしね。
 唯一エビデンスとしてあるのは、よく噛むこと。噛む回数を増やしたら必ず痩せるというデータはあるのです。一方で、野菜から食べた人が必ず痩せるというデータはない。糖尿病の人に良いのであれば言わんや我らは、とむやみに信じるけど、そもそもエビデンスがないことなのです。
 
2018年1月号より

宇宙飛行士のトレーニング

 
 筋肉を動かすのはいつでもできる。5分でもいいんですよ。
 たとえば、NASAでも宇宙飛行士がやっています。宇宙へダンベルを持って行ったって無重力だから重さはなくてどうにもなりません。そういうわけで、宇宙飛行士が何をやっているかと言ったら、自分で自分の手と手を合わせて押したり、あるいは引っ張ったりしています。首も頭をぐーっと押して筋肉を使う。座っている時には、左膝を上に置いて、右の膝で手前へ引きながら、左の足を伸ばそうとするわけ。これで筋肉が強くなる。そして、反対も同じようにして、上が曲げようとして右のほうは伸ばそうとする。互いにケンカさせたらいいんです。
 こんなふうにして、1日中どこでもトレーニングできますよ。電車でも僕はトレーニングしています。座っている時もできます。座席を手で押してお尻を浮かせれば、腹筋、上腕三頭筋、大胸筋も同時に使います。
 トレーニングなんていつでもできます。要は、やり方と知識があれば良いんですよ。
 
2017年12月号より

生活トレーニングのススメ

 
 面白いことに、人間はテコで動いています。たとえば前屈した時、背中の筋肉に何十倍と力がかかります。そのせいで、日ごろから動いていないと、ぎっくり腰なんかが起こる。筋肉は普段の動きで鍛えられるんですよ。何でもいいから持ち上げたり移動させたりすることを頻繁にやると、筋肉に対して刺激になる。極端なことを言えば、無駄に遠くに物を置いといて、それを取りに行くだけでトレーニングになるんです。
 己の身体のダンベルは何十㎏もあるし、スクワットだと上半身30㎏とか40㎏の物体を持ち上げていることになる。スクワットが嫌だったら、頻繁に立ったり座ったりして日常の生活をする。掃除機を使わずに、たまには床を拭き掃除すればいいわけですよ。そのようなニートを増やしていけば、痩せられます!
 普段の生活でも、トレーニングしようとすれば、できないことはないんですよ。
 
2017年11月号より

プヨプヨの理由

 
 糖質をとらずに、スポーツをした場合どうなるか。一気に筋肉がなくなるんです。
 たとえば、ちょっと太り気味な選手に減量させるわけですよ。筋肉が一緒だとすれば理論的にはそのほうが速く走れるから。ところが、速くならない。何故なら糖質やタンパク質制限するような減量をして、体重は落ちるけど筋肉も一緒になくなっていくから。そういう時、タンパク質だけとってもダメなんです。筋トレをやって、筋肉がタンパクを欲しがるような状況を作ったうえでタンパク質を減らさず、総エネルギー摂取量を減らすと、筋肉は維持できる。体重1㎏当たり2.4gのタンパク質を取って、もっとしっかり筋トレをやると、筋肉が1㎏くらい増えます。
 これは、ふつうの人のダイエットでも言えることで、痩せるのはいいけれど、筋肉がゲソっと落ちて代謝も落ちるから、普通の食事に戻るとまたグッと太るわけです。筋肉はどんどん削げ落ちていく。でも運動しないから基本的に体脂肪が残る。すると、顎がたるんだ、寸胴足のプヨプヨした体になるというわけです。
 
2017年10月号より

ゆっくり歩いても、はやく走っても

 
 同じ距離を、ゆっくり歩くのと、はやく走るのとでは、どちらが痩せやすいのか。
 物理的に60㎏の物体(60㎏の体重の人)を1㎞動かすとして、走ったら5分で、歩くと15分かかるとする。走ったら早く着きますし、歩いたら長い間動いてエネルギーを消費します。
 エネルギーが使われたら、筋肉では熱が出ます。エネルギーって熱いんですよ。使ったエネルギーの25%が理想的に身体を動かすことに使われますが、残りの75%は全部熱になって熱くなる。ところが、その筋肉の温度があまりに高くなって身体全体の温度が上がると、脳がうまく機能しなくなるので、Oh NO!とばかりに発汗する。何故汗をかくかと言うと、汗を出して空気に触れた時に気化して身体の熱を逃がすためです。
 このように、走れば短時間で多くのエネルギーを使うので汗をかきますが、1㎞を歩いても走っても、トータルで使ったエネルギーの量は一緒なんですよ。
 
2017年9月号より

自分のダンベルを動かせ

 
 先日教えている学生から、こんな質問を受けて驚きました。
「背中のこの脂肪だけ取りたいんですよ」って。
 ご存じのとおり脂肪は全身に分布していますから、こんな運動をすればここの脂肪だけ取れる、なんてことはありません。そのように伝えると「え? そうなんですか?」と聞き返されましたよ。
 脂肪を取るとなると、ちょっとしたダンベルを持つぐらいでは消費エネルギーは少ないので、もっと多く消費できる良い方法があります。仮に、あなたの体重が60kgだったら、それはあなたが持ってるダンベルより、あなたのほうがずっと重いでしょう? 自分のダンベルを動かせって。足の筋肉は大きくて、それほど疲れないものだから、歩いたりちょこまか動いたりすることはあまり運動にならないとみなさん錯覚するんですよ。けれど、実はこのほうが何十倍もエネルギーを使うんです。そういう基本的なところをぜひ理解していただきたいと思います。
 
2017年8月号より

運動する喜び

 
 私の研究室に来た社会人の学生の論文のテーマが「ランナーズハイ」。アメリカのスポーツ医学会が推奨している運動強度レベルにもっていくのに、一般のまったく運動をしていない京大生を使ってやってみたところ、3ヶ月くらいかかりました。毎回、脳波やβ−エンドルフィン(運動後の爽快感や精神的ストレスの解消に大きく貢献する物質)をはかるんですが、運動である程度の強度をこなさないと出てこない。けれど、体力をつけて必要十分な運動ができるところまでいくと、この報酬系の物質が出てきて楽しくなるんです。
 山登りも最初はつらいけれど、それを一度クリアするとすごく快感になる。高齢者でも、ゆっくり歩いて登って、休みながらでもよいので進んでいけます。景色が変わって動きや刺激にバリエーションがあり、自律神経が活性化します。同じペースで平地を歩いたり、ジョギングしたりするより、ずっといいですよ。ただし翌日、筋肉痛になりますけどね。
 
2017年7月号より

生活習慣病になるということ

 
 生活習慣病になる人は、知識のない人。それが僕の持論です。
 以前、ある社長がタンパク質だけ食べて炭水化物を抜くとやせたので、従業員にも勧めたら皆やせたという記事がありました。確かに、体重だけは減るでしょう。それに一応タンパク質は摂っていて、炭水化物がひどく不足したら糖新生して自分の筋肉まで減らさないでしょうが、はたしてそれで良いのでしょうか? 炭水化物をごっそり抜いたら大変、意欲が湧きません。脳は、タンパク質だけでなくケトン体がエネルギーになるので、中鎖脂肪酸を含むものを食べれば良いことになりますが、脳だけで400キロカロリー要るから、全部摂るとすればかなりの量が必要です。安静時でも50%は糖質を基礎代謝として使っているので、それを炭水化物以外で摂ろうとしたら、どれだけ脂を食べなければならないか!
 僕は栄養や運動のことをよく知っていて、実践したらどうなるかわかっています。だから僕は、生活習慣病にはならないのです。
 
2017年6月号より

自然に枯れたい

 
 僕は老衰で死にたいと思っています。自然に枯れたい。
 老衰で死ねる人は、日本で2%です。
 102歳で亡くなった医師の方が「医者は病で死ぬなかれ」とおっしゃった。亡くなる2日前まで、運動も栄養もきっちり実践され、最後までタンパクをしっかり摂っておられました。
 
 元気なとき、人は豪語するものです。
 「タバコをやめるなら早死にしたほうがいい」とか「ステーキ喰って太って死んでも本望」とか。でもそれで、肺がんや大腸がんになったとたん怖くなってしまう。怖がるぐらいならやめなさい。タバコ1日100本吸って死なない人もいれば、全く吸わないのに肺がんで死ぬ人もいる。けれど、いっぱい吸う人のほうが死の確率が圧倒的に高いんですから。
 
 僕は学者のはしくれなので、体に良いことは勉強して実践したい。
 年をとるのは辛いけれど、こればかりは普遍的に起こることなので、健康を維持して、人生のカウントダウンを謳歌したいと思っています。
 
2017年5月号より