情報素材料理会<第104回> 

「株式会社おせっかい倶楽部」の事業展開について



講師:森谷 敏夫

京都大学名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部
代表取締役
 

NPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会の活動を踏まえて、2019年1月、私たちは新たな健康サービスを提供する事業会社を創設しました。名称は株式会社「おせっかい倶楽部」。今回はその代表取締役を務める森谷敏夫が、新会社の設立の経緯と事業概要を語ります。

NPOで培った
知見・実績を元に
新会社「おせっかい倶楽部」を設立

 今回、株式会社おせっかい倶楽部の創設にあたって、その代表取締役となりました森谷敏夫です。どうぞ、よろしくお願いします。
 今年2019年の1月11日、1・1・1の大安の日、私は1が好きなので、その日に会社の登記をしました。元々のベースは、2007年に西村周三先生と立ち上げたNPO法人EBH推進協議会でして、昨年、より分かりやすい名称にしようということで「エビデンスベーストヘルスケア協議会」と改名しました。予防医療の普及啓発を目指した非営利組織です。本来NPOは営利を目的にはできないのですが、今まで10年やってきた私たちメンバー共通の気持ちとして、このNPOで培った知見・実績を生かして、具体的に社会に広く役立つ健康づくりの事業をしようという意識が高まり、この会社の設立に至りました。
 私企業としてプロフィットは得てもいいのだけれども、それは使っていただいたユーザーさんからの感謝料だと思って、社会から感謝される仕事をし、それが生活の糧になるのが一番いいかなと、私は思っています。
 私たちがなぜ新会社を起こしたかというと、この10年で健康についての社会の捉え方が大きく変わったからです。いま、日本は超高齢社会を迎え、制度や体制も急激に大きく変わってきています。
 その中で、これまで私たちは、NPOを通して予防医療の啓発活動をするとともに、どちらかというと10年間、学術的なことをずっとやってきていて、その中で培ったソフトやコンテンツがいっぱいあります。
 例えばひめくりカレンダー。そのコンテンツには自律神経の話や、運動や食をはじめ生活習慣に関わる話など、最先端の研究で検証された健康情報が、eラーニングのために網羅されています。
 
 

 
 これらを実際に作っているのは、現役バリバリの臨床医あるいは研究者たちです。行動経済学の権威である西村周三先生はもちろん、運動生理学が専門の私とか、京都医療センターで生活習慣病の臨床と研究をしてこられた坂根直樹先生、京大の医学部で今までずっと健康情報学・公衆衛生をおやりになってきた中山健夫先生。そして先生方の傘下にいるたくさんの研究者がいろいろなコンテンツをいっぱい作ってきたわけです。
 生意気なことを言いますが、おそらく今、健康経営のため出てきている健康コンテンツやソフトの中では、間違いなくうちのものがベストです。
 これから私は、セールスマンとして、NPOから生まれてきたコンテンツをいろいろなところに売りに出ようと思っています。実は今まではそうした活動は一度もしたことがないんですね。何故かというと、これまでは京都大学の中にいましたので、そういうビジネス展開はできなかったわけです。
 

日本の超高齢社会に応える
新たな健康サービス

 昨年、今後の日本の医療や介護の実行の基本指針となる医療基盤法が国会で可決されました。この新たな法律に基づき、今年からは、様々な制度が急速に、かつ広範囲に変化していくと考えられます。
 また、そうした社会背景の中で、多くの企業さんが健康経営や働き方改革に本気で取り組む時代になり、その動きに合わせ、様々な健康事業の提案やコンテンツ、サービスが生まれています。私もいろいろな企業や団体から相談を受けたことがあるのですが、それらの内容を見ると玉石混淆で、明らかに我々の創ってきた既存コンテンツの方がレベルは高い。まず、私はそれらのすでに創りあげてきたコンテンツを軸に販売展開していくつもりです。
 そしていま新しい概念の事業を準備中なのですが、そこではいろいろな会社や健保の会員の方たちが気軽に学べるようなユニークなコンテンツや独自のサービスを提供していきたいと思っています。
 私たちがこのサービスを使ってほしいと考えているターゲット層は、事業的に、最初はもちろん生産年齢と言われている企業にお勤めの方々です。ただし、今後重要となってくるのは、その先の退職後の老年人口で、実際にはここら辺が徐々にメインになっていくと思います。何故かと言うと、私もそうですが、定年して職を離れると、健康保険とか医療費とかがものすごく気になるわけですね。ご存じのように健康寿命を損ねてから、男の場合、介護を受けて死ぬまでに大体9年間もあるわけです、平均で。実は、その9年間で、人生で使う概ね7割の医療費がかかります。
 

 
 定年してからそういう心境になってくると、自分の健康を1日でも自分の寿命に近づけたい、健康寿命を延伸したいという願望が出てきます。そのためのサポートとしては、やはり病院とかに行かなくてもいいように、元気なうちに楽しく学んで、自ら自分の健康管理を進めていく、そういうことをする人を増やしたい。私たちのサービスにはそういうコンテンツがたくさん入っています。当然、若い人でもよいのですが、この辺の少しご高齢の方にとっては非常にニーズが大きいのかなあと思っています。
 

健康資産ビッグデータ
プラットフォーム事業を
中核に
健康コンテンツ
プロバイダー事業
教育事業の3事業で構成

 

 
 おせっかい倶楽部の事業ですが、簡単に整理すると図のように3つの大きな事業に分かれます。
 1つめは健康資産ビッグデータプラットフォーム事業。
 いろいろな会社の従業員や、カード会社のように多くの会員がいる企業の会員向けの健康サービスを提供することからはじめて、最後は個人サービスを目指します。
 図の右にいるのがイメージキャラクターの「ちひろ」で、現在、ちひろちゃんをモデルにした楽しいゲーミフィケーションアプリを、準備中です。
 このアプリでは、健康についてのいろいろな知恵をeラーニングで学びながら、自分のカラダデータを自分自身、あるいは機械で自動的に記録する。さらには、ちひろが100歳まで生きられるように、自分を賢くして、ちひろを賢くしていくようなストーリーも用意しています。
 また、このアプリと自律神経を測定するようなIoT機器との連動サービスなども準備しています。
 ここでの目玉は、健診データをはじめ様々なデータを揃える健康データベースの準備、そして、データベースに蓄積されている利用者ひとりひとりの健康状態をよく知っていて最適のアドバイスをしてくれる健康AIエージェント「ちひろ」です。大変手間はかかりそうですが、これがやがては私たちのサービス事業の柱になると考えています。
 
 2つめは、健康コンテンツのプロバイダー事業。
 多分、私が最初に一番力を注ぐのはこれだと思うのですが、これまでお話ししたようにいろいろなアプリケーション、サプリとか、書籍、ひめくりカレンダー、あるいは健康5つ星検定など、すでに提供できるものがあります。それに新たなエビデンスに基づいたコンテンツを追加していきます。また、スマホでの動画配信やテレビの番組との連動映像コンテンツ、雑誌など、今後も様々な最新コンテンツを揃えていきます。
 
 そして3つめは、教育事業。
 2007年のNPOスタートから、西村塾としてこれまで100回以上続けてきた月例セミナーの拡大形事業として、おせっかい倶楽部のサービスをベースにした健康関連の様々なコースや先生方の特別な講義を開催していく予定です。ご要望があれば全国各地に出て行きます。さらに、講師や起業家の育成といった、教育事業も展開していきます。
 
 これら3つの事業は、いろいろな企業や健保の方々、また多くの会員を持っていらっしゃる会員組織や団体にご提案し、連携やタイアップをしながら進める予定です。準備スタッフはいま必死で、もっと楽しくもっと役に立つサービスを用意するように頑張っています。
 

「おせっかい倶楽部」は
独創性とアイディアに富んだ面白い会社

 私たちにとっては、今日が船出です。スタッフは健康や医療・運動・栄養についての粒選りの研究者とコンテンツやサービスの企画編集のプロなどのエキスパート揃いです。ただ、私自身は、国立大学の出身で研究や教育はプロですが、具体的なビジネスをやったことはありません。そういうことで、多少とんちんかんな社長が会社を誘導することになりますが、独創性とかアイディアだけは負けないつもりですし、その上、NPOの先生方の、行動経済学、疫学、臨床医学などのジャンルで長年にわたって絶大な信頼を得てきた素晴らしいサポートがあります。
 何より自分で軽いフットワークで営業に動きますので、とても面白い会社になると思います。
 ぜひご協力をお願いいたします。
 
 

編集後記にかえて
菊池夏樹
高松市菊池寛記念館名誉館長
(株)文藝春秋社友

 
 森谷敏夫・京大名誉教授を代表に新会社が設立された。今まで長い間続けてきたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会に集められた健康に関するデータやノウハウは山のようで、それを利用しない手はない。とにかく日本人が世界一長寿になったのだから、世界の手本になるためにも、集積されたものを具体に変えて世に送り出す会社が必要になったのだ。西村周三、中山健夫、坂根直樹の各先生方のご協力と知恵袋を使って、世界一の健康国になる準備は整ったのだ。夢の実現である。