おせっかい倶楽部
 
 

坂根 直樹

(さかね なおき)
京都医療センター
臨床研究センター
予防医学研究室室長

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 日本では、人が一生涯でがんになる確率は、男性が62%、女性が46%で、男性では40歳以上になると消化器系のがん(胃がん、大腸がん、肝臓がん)になりやすく、70歳以上になると肺がんと前立腺がんになる人が多くなります。それに対して、女性は40歳代では乳がんや子宮がんになりやすいのですが、70歳以上になると消化器系のがん(大腸がん、胃がん、肝臓がん)の割合が増加します。がんの罹患数で見ると、男性は胃がん、女性は乳がんが第1位ですが、男女計の場合、胃がんが第1位です。(「地域がん登録全国集計(2013年)」による)

 胃がんは、胃袋の内側にある粘膜にできるがんで、徐々に外側に浸潤(しんじゅん/水が染みるようにじわじわと広がっていくこと)していきます。粘膜の下までにとどまっているのを早期胃がん、粘膜の下の筋肉より深く浸潤したのを進行胃がんといいます。早期胃がんのうちに治療できると根治となりますが、進行すると治療がだんだん難しくなってきます。早期発見・早期治療が大切といわれる所以です。

 早期に胃がんを見つける胃がん検診としては胃X線検査、胃内視鏡検査、ペプシノゲン検査、ヘリコバクターピロリ抗体検査があります。
 胃がんのリスクとして、確実な要因となるのが喫煙とピロリ菌です。ピロリ菌は胃の粘膜にすみつく、らせん形の細菌です。ピロリ菌を発見したのはオーストラリアのマーシャル医師。彼は自分でピロリ菌を飲み、胃炎になることを証明しました。ピロリ菌は、母から子に感染すると考えられていて、衛生状態の悪い国では予防のために母乳や食物を与える前に手を洗うことが予防につながることが期待されています。
 日本のピロリ菌の感染率は1910年から1940年代までは60%を超えていましたが、1998年以降の感染率は10%と低下しており、日本での胃がん死亡率低下の主な要因と考えられています。現在は、ピロリ菌の除菌治療も、胃酸の分泌を抑える薬と2種類の抗菌薬を1週間飲むことで簡単に行えます。
 食事の面では塩辛いものを控えて、野菜や果物を適切にとったり、緑茶を飲む習慣をつけたりすることなどで胃がんの予防につながりそうです。
 
 
2018年8月号より



平均睡眠時間は?
 年齢とともに平均睡眠時間は短くなってきます。25歳で7時間、45歳で6時間30分、65歳で6時間というのが平均的なようです。
 しかし、個人差があることも知られています。
 発明王エジソンは睡眠時間が短く(ショートスリーパー)、アインシュタインの睡眠時間は長かったとか(ロングスリーパー)。
 あなたの平均睡眠時間はどのくらい?
 
睡眠不足と食欲
 ちなみに5時間未満の睡眠不足になると、満腹ホルモンであるレプチン(脂肪細胞から分泌される)は減少し、食欲増進ホルモンであるグレリン(胃から分泌される)が増加して、異常に食欲がわいてきます。
 特に、甘いものや炭水化物、ナッツなど塩辛いものが食べたくなる傾向があるのだそうです。
 食欲をコントロールするためには、睡眠不足の解消が先決かもしれませんね。
 
睡眠不足と食欲
 とはいえ、必ずしも長い時間…8時間睡眠しなければならないというわけではないようです。
 たとえば、仕事をしていた頃はぐっすり眠れていたのに、定年後に「よく眠れない」と不眠を訴える人がいます。今まで6時間睡眠の人の場合、生活が自由になったからと午後10時に寝て午前7時に起きる9時間睡眠に変えると眠れなくなります。
 なぜなら、睡眠が浅くなったり、途中で起きたりするから、眠れないと感じるわけです。つまり、不眠症の原因は「寝過ぎ」だったのです。

 あなたの睡眠時間は、あなたの生活リズムに合っていますか?
 
 
2018年7月号より

アルコールを
飲まないのに脂肪肝!?

 
 健康診断の検査結果で、アルコールを飲まないのに肝機能検査(AST、ALT、γ-GTP)が異常値を示している場合があります。
 脂肪肝とは、肝臓に脂肪が異常に蓄積した状態です。脂肪肝の原因として、アルコール以外に、過栄養があります。後者を「非アルコール性脂肪肝」と言います。以前は、「脂肪肝は良性なので放っておいてもよい」と言われていたのですが、最近の研究では、この非アルコール性脂肪肝の自然経過をみると、5~15年の間に脂肪肝の0~40%が脂肪性肝炎に進展し、脂肪性肝炎の5~20%が肝硬変となり、肝硬変の0~15%に肝がんの発症がみられるそうです。さらに、非アルコール性脂肪肝の人は糖尿病にもなりやすいことがわかっています。どうも「脂肪肝は良性なので…」というのは俗説だったようです。
 日本国内の1000万人以上が非アルコール性の脂肪肝、100万人以上が脂肪肝炎に罹患しているのではないかと推定されています。実に驚くべき数字ですね。
 
2018年1月号より

動脈硬化にならないために

 
「動脈硬化」とは文字通り動脈が硬くなることです。では、どういうメカニズムで動脈硬化になるのでしょうか?
 高血圧や糖尿病になると、血管の内側に傷がつきます。そこに血液中のコレステロールが酸化されたものが血管の中にたまり、プラーク(粥腫)ができます。これができると、血管の内径が細くなり、動脈が硬くなることで血液の流れが悪くなります。さらに、血のかたまり(血栓)ができると、血流が完全に途絶えて心筋梗塞や脳梗塞が起こってしまいます。
 動脈硬化が進むと、心筋梗塞など冠動脈疾患になるリスクが高まります。年齢が高い、現在喫煙している、糖尿病である、血圧が高い、悪玉(LDL)コレステロール値が高い、善玉(HDL)コレステロール値が低い、腎機能が低下している人は冠動脈疾患になるリスクが高いことが知られています。検査値の意味をよく知って、血圧、血糖、脂質を管理するとともに、健康的な生活習慣(禁煙、健康的な食事、運動)を心がけましょう。
 
2017年12月号より

世界糖尿病デー

 
 11月14日は「世界糖尿病デー」。1921年に血糖を調節するインスリンというホルモンを発見したバンティング博士の誕生日です。
 それまで糖尿病は不治の病とされ、極端な糖質制限を強いられてきました(不治の病の時代)が、インスリン発見により薬で治療できる時代となりました(糖尿病による昏睡克服の時代)。1922年に世界初のインスリンが患者に投与され、1923年にバンティング博士はノーベル賞を受賞しました。1993年に行われた介入研究では、糖尿病の三大合併症(神経障がい、眼、腎臓の障がい)が厳格な血糖管理で抑制されることがわかりました(糖尿病合併症克服の時代)。
 国民健康・栄養調査(2016年)によると、糖尿病が疑われる人は12.1%(男性16.3%、女性9.3%)で、日本全体では1000万人を超えるとも。糖尿病は心血管疾患や認知症のリスクも高めるため、現在は、健康寿命を延伸させるのが糖尿病予防の目的となりました。
 予防のキーワードは、運動、減量、野菜摂取、節酒。これを機に生活習慣を見直してみませんか?
 
2017年11月号より

高尿酸血症とアルコール

 
 尿酸とは、細胞の核などに含まれているプリン体という物質が肝臓で分解されてできる老廃物で、これが結晶化する濃度が7.0㎎/dl。そのため、痛風や腎障がいの原因となる高尿酸血症の定義は、血清尿酸値が7.0㎎/dl以上となっています。
 アルコールは生ビール1杯程度なら、焼酎やウィスキーなどプリン体の少ないアルコール飲料に変えることで尿酸値の上昇を抑えることが期待されます。ところが、焼酎も3杯を超えるとアルコール自体が悪さをして尿酸値を高くします。痛風発作はアルコール摂取量に比例します。そして、たまの激しい運動も尿酸値を上げますが、適度な運動を行っている人は痛風になりにくいとされています。ということは、プリン体制限にばかりでなく、体重コントロールや節酒、運動に注目する必要があるようです。
 ちなみに、デザートの「プリン」(Pudding)と「プリン体」(Purine)は英語の綴りも違い、別物になります。
 
2017年10月号より

脳卒中が起こったら

 
 寝たきりなど介護が必要となる原因の第1位が脳卒中(脳血管疾患)。脳卒中は、脳の血管がつまる脳梗塞と、脳の血管が破れて出血する脳出血や、くも膜下出血に分けられます。厚生労働省の患者調査(平成26年)によると、脳卒中の患者数は117万9000人。亡くなる人は年間11万人ほどになります。
 それでは、脳卒中の発作が起きた時にはどうしたらよいでしょうか? 片麻痺や言語障がいなどの症状を伴う脳梗塞が起きた際には血栓溶解療法が用いられます。その勝負タイムは、発作が起こってから4・5時間以内。迅速に治療を受けることで社会復帰できる可能性が高まります。
 脳卒中のチェック方法は「顔・腕・言葉」。次の項目のいずれかが当てはまる場合、症状が出てきた時間を確認して救急車を呼び、医療機関に受診するようにしましょう。
 
・顔……笑った時、
    口や顔の片方がゆがまないか
・腕……両手を上げて、
    片方の手が下がっていないか
・言葉…簡単な言葉が出ない、
    もつれるなどしていないか
 
2017年9月号より

熱中症と「暑さ指数」

 
 暑い日が続くと、熱中症が気になりますね。
 熱中症は身体の水分や塩分のバランスが崩れ、体温が上昇することにより起こります。熱中症は気温だけでなく、湿度や輻射熱(ふくしゃねつ…地面や建物・体から出る赤外線により伝わる熱)などの影響を受けます。運動により体温は上昇しますが、汗をかくことで気化熱により体温は低下します。しかし、湿度が高くなると最初は汗をかくものの、湿度の高い状態のままだと汗は気化しにくくなり、発汗が抑えられてしまいます。また、高温の道路の上では体感温度がとても高くなりますが、打ち水をして高温になった道路の熱を下げることで輻射熱は下がり、体感温度も下がります。
 このように、気温に加え、湿度と輻射熱の効果を加味したのが「暑さ指数」(湿球黒球温度(WBGT))です。
 環境庁の熱中症予防情報サイトでは「暑さ指数」について実況と予測を掲載しています。参考になさってはいかがでしょう。
 
http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php
 
2017年8月号より

夏バテ対策と土用丑の日

 
 そろそろ夏バテが気になる季節。夏バテ対策に「土用丑(うし)の日に鰻でも食べなきゃ」と思っている人がいるかもしれません。今年(2017年)の土用丑の日は7月25日の火曜日と8月6日の日曜日。スーパーでも鰻料理が並びます。
 さて、いつ頃から土用丑の日に鰻を食べるのが習慣となったのでしょうか。答えは江戸時代。実は、鰻の旬は冬で、その当時、夏には暑さのために鰻があまり売れなかったそうです。ところが、ある鰻屋が「本日丑の日」との張り紙を書いて店先に貼ったところ、大繁盛。このキャッチコピーを思いついたのが平賀源内で、ヨーロッパ製の歩数計を改良した「量程器」も作っています。
 一昔前は暑さによる食欲低下が夏バテの主な原因でしたが、最近の夏バテは冷房のきいた部屋と外気温の差で体温調整が困難になるのが原因になることも。読者の皆さんも、体温調節機能を高めるために、歩数計をつけて涼しい時間帯に歩いてみては、いかが。
 
2017年7月号より

梅雨になると食欲が増すの!?

 
 先日、ある患者さんから「梅雨になると食欲が出るんですか?」と尋ねられました。かびが生えやすい梅雨時は、蒸し暑くて体調を崩し、食欲が出ない人が多いと感じていましたが、これはどういうことでしょうか。
 その発端となったのはあるバラエティ番組。ホームページを見ると「梅雨の時期は体調を崩し、ストレスがたまりやすい。そのため、満腹ホルモンであるレプチン分泌が低下し、食欲増進ホルモンであるグレリンの分泌が増加するので、ダイエットに失敗しやすい」とのこと。確かに、睡眠不足になるとそのような現象が起きることはわかっていますが、梅雨とは関係ありません。さらに、その番組では、「朝日を浴びることで基礎代謝が上がり、太りにくい体になる」と対策まで紹介。紫外線でビタミンDの合成を促進させるとレプチンが減る、と誰かがコメントしたようです。残念ながら、エビデンスレベルはかなり低いので、注意して視聴してくださいね。
 
2017年6月号より

病は気から - 糖尿病編

 
 「病は気から」とは、病気は気の持ちようで良くも悪くもなるという意味ですが、糖尿病にも当てはまるでしょうか。興味深い実験結果があります。昼食後に、つまらない糖尿病の講義を聞いた時に比べ、笑える漫才を聞いた方が食後血糖値は低かったのです。思いきり笑うのは散歩程度のエネルギー消費があり、それが値を改善させたのです。また、笑いは免疫力を高めることが遺伝子レベルでもわかっています。
 糖尿病の人の気持ちも様々です。糖尿病に対し前向きな人は、健康的な食事を選び、少しでも体を動かそうとします。たまに食べ過ぎても、翌日食事量を調節して体重や血糖値が増えないよう考えます。さらに、失敗からの回復力(レジリエンス)もあるそうです。一方、後ろ向きの人は、落ち込んだ後に自分はダメな人間と考え自堕落になりがち。もちろん、心理的ストレスは発症リスクを増加させます。
 どうやら、「病は気から」は糖尿病でも当てはまりそうです。
 
2017年5月号より