健康おせっかい倶楽部
 
 

坂根 直樹

(さかね なおき)
京都医療センター
臨床研究センター
予防医学研究室室長

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世界糖尿病デー

 
 11月14日は「世界糖尿病デー」。1921年に血糖を調節するインスリンというホルモンを発見したバンティング博士の誕生日です。
 それまで糖尿病は不治の病とされ、極端な糖質制限を強いられてきました(不治の病の時代)が、インスリン発見により薬で治療できる時代となりました(糖尿病による昏睡克服の時代)。1922年に世界初のインスリンが患者に投与され、1923年にバンティング博士はノーベル賞を受賞しました。1993年に行われた介入研究では、糖尿病の三大合併症(神経障がい、眼、腎臓の障がい)が厳格な血糖管理で抑制されることがわかりました(糖尿病合併症克服の時代)。
 国民健康・栄養調査(2016年)によると、糖尿病が疑われる人は12・1%(男性16・3%、女性9・3%)で、日本全体では1000万人を超えるとも。糖尿病は心血管疾患や認知症のリスクも高めるため、現在は、健康寿命を延伸させるのが糖尿病予防の目的となりました。
 予防のキーワードは、運動、減量、野菜摂取、節酒。これを機に生活習慣を見直してみませんか?
 
2017年11月号より

高尿酸血症とアルコール

 
 尿酸とは、細胞の核などに含まれているプリン体という物質が肝臓で分解されてできる老廃物で、これが結晶化する濃度が7.0㎎/dl。そのため、痛風や腎障がいの原因となる高尿酸血症の定義は、血清尿酸値が7.0㎎/dl以上となっています。
 アルコールは生ビール1杯程度なら、焼酎やウィスキーなどプリン体の少ないアルコール飲料に変えることで尿酸値の上昇を抑えることが期待されます。ところが、焼酎も3杯を超えるとアルコール自体が悪さをして尿酸値を高くします。痛風発作はアルコール摂取量に比例します。そして、たまの激しい運動も尿酸値を上げますが、適度な運動を行っている人は痛風になりにくいとされています。ということは、プリン体制限にばかりでなく、体重コントロールや節酒、運動に注目する必要があるようです。
 ちなみに、デザートの「プリン」(Pudding)と「プリン体」(Purine)は英語の綴りも違い、別物になります。
 
2017年10月号より

脳卒中が起こったら

 
 寝たきりなど介護が必要となる原因の第1位が脳卒中(脳血管疾患)。脳卒中は、脳の血管がつまる脳梗塞と、脳の血管が破れて出血する脳出血や、くも膜下出血に分けられます。厚生労働省の患者調査(平成26年)によると、脳卒中の患者数は117万9000人。亡くなる人は年間11万人ほどになります。
 それでは、脳卒中の発作が起きた時にはどうしたらよいでしょうか? 片麻痺や言語障がいなどの症状を伴う脳梗塞が起きた際には血栓溶解療法が用いられます。その勝負タイムは、発作が起こってから4・5時間以内。迅速に治療を受けることで社会復帰できる可能性が高まります。
 脳卒中のチェック方法は「顔・腕・言葉」。次の項目のいずれかが当てはまる場合、症状が出てきた時間を確認して救急車を呼び、医療機関に受診するようにしましょう。
 
・顔……笑った時、
    口や顔の片方がゆがまないか
・腕……両手を上げて、
    片方の手が下がっていないか
・言葉…簡単な言葉が出ない、
    もつれるなどしていないか
 
2017年9月号より

熱中症と「暑さ指数」

 
 暑い日が続くと、熱中症が気になりますね。
 熱中症は身体の水分や塩分のバランスが崩れ、体温が上昇することにより起こります。熱中症は気温だけでなく、湿度や輻射熱(ふくしゃねつ…地面や建物・体から出る赤外線により伝わる熱)などの影響を受けます。運動により体温は上昇しますが、汗をかくことで気化熱により体温は低下します。しかし、湿度が高くなると最初は汗をかくものの、湿度の高い状態のままだと汗は気化しにくくなり、発汗が抑えられてしまいます。また、高温の道路の上では体感温度がとても高くなりますが、打ち水をして高温になった道路の熱を下げることで輻射熱は下がり、体感温度も下がります。
 このように、気温に加え、湿度と輻射熱の効果を加味したのが「暑さ指数」(湿球黒球温度(WBGT))です。
 環境庁の熱中症予防情報サイトでは「暑さ指数」について実況と予測を掲載しています。参考になさってはいかがでしょう。
 
http://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php
 
2017年8月号より

夏バテ対策と土用丑の日

 
 そろそろ夏バテが気になる季節。夏バテ対策に「土用丑(うし)の日に鰻でも食べなきゃ」と思っている人がいるかもしれません。今年(2017年)の土用丑の日は7月25日の火曜日と8月6日の日曜日。スーパーでも鰻料理が並びます。
 さて、いつ頃から土用丑の日に鰻を食べるのが習慣となったのでしょうか。答えは江戸時代。実は、鰻の旬は冬で、その当時、夏には暑さのために鰻があまり売れなかったそうです。ところが、ある鰻屋が「本日丑の日」との張り紙を書いて店先に貼ったところ、大繁盛。このキャッチコピーを思いついたのが平賀源内で、ヨーロッパ製の歩数計を改良した「量程器」も作っています。
 一昔前は暑さによる食欲低下が夏バテの主な原因でしたが、最近の夏バテは冷房のきいた部屋と外気温の差で体温調整が困難になるのが原因になることも。読者の皆さんも、体温調節機能を高めるために、歩数計をつけて涼しい時間帯に歩いてみては、いかが。
 
2017年7月号より

梅雨になると食欲が増すの!?

 
 先日、ある患者さんから「梅雨になると食欲が出るんですか?」と尋ねられました。かびが生えやすい梅雨時は、蒸し暑くて体調を崩し、食欲が出ない人が多いと感じていましたが、これはどういうことでしょうか。
 その発端となったのはあるバラエティ番組。ホームページを見ると「梅雨の時期は体調を崩し、ストレスがたまりやすい。そのため、満腹ホルモンであるレプチン分泌が低下し、食欲増進ホルモンであるグレリンの分泌が増加するので、ダイエットに失敗しやすい」とのこと。確かに、睡眠不足になるとそのような現象が起きることはわかっていますが、梅雨とは関係ありません。さらに、その番組では、「朝日を浴びることで基礎代謝が上がり、太りにくい体になる」と対策まで紹介。紫外線でビタミンDの合成を促進させるとレプチンが減る、と誰かがコメントしたようです。残念ながら、エビデンスレベルはかなり低いので、注意して視聴してくださいね。
 
2017年6月号より

病は気から - 糖尿病編

 
 「病は気から」とは、病気は気の持ちようで良くも悪くもなるという意味ですが、糖尿病にも当てはまるでしょうか。興味深い実験結果があります。昼食後に、つまらない糖尿病の講義を聞いた時に比べ、笑える漫才を聞いた方が食後血糖値は低かったのです。思いきり笑うのは散歩程度のエネルギー消費があり、それが値を改善させたのです。また、笑いは免疫力を高めることが遺伝子レベルでもわかっています。
 糖尿病の人の気持ちも様々です。糖尿病に対し前向きな人は、健康的な食事を選び、少しでも体を動かそうとします。たまに食べ過ぎても、翌日食事量を調節して体重や血糖値が増えないよう考えます。さらに、失敗からの回復力(レジリエンス)もあるそうです。一方、後ろ向きの人は、落ち込んだ後に自分はダメな人間と考え自堕落になりがち。もちろん、心理的ストレスは発症リスクを増加させます。
 どうやら、「病は気から」は糖尿病でも当てはまりそうです。
 
2017年5月号より